大河ドラマ「光る君へ」 藤原実資が藤原道綱を罵倒した興味深い理由
- 2024/06/17
大河ドラマ「光る君へ」第24回は「忘れえぬ人」。
藤原伊周・隆家兄弟が左遷された長徳の変(996年)の翌年夏、藤原道長は病となっています。後々にも、道長は病に悩まされることになりますが、この時の病は軽いものだったようです。病になって約一ヶ月ほどで除目(大臣以外の官職を任じる儀式)の上卿(行事の責任者として指名された公卿)になっているからです。
道長は、異母兄の藤原道綱を大納言に任命するのです。道綱の父は、藤原兼家。母は『蜻蛉日記』の作者・藤原倫寧の娘です。ちなみに「光る君へ」では、道綱を俳優の上地雄輔さんがコミカルに演じて話題を集めています。道綱が大納言という人事に強烈な不満を露わにしたのが、公卿の藤原実資でした。「光る君へ」では、お笑い芸人で俳優の秋山竜次さんが、独特な雰囲気を醸し出した実資を好演しています。実資がこの人事に怒ったのは、道綱に追い越されたということもあるでしょうが、道綱の人物に不満があったようです。
「僅かに名字を書き、一、二を知らざるの者」
実資はこのように日記『小右記』に記しています。つまり、道綱は自分の名字くらいは書けるが、その他のことは何も知らない男だというのです。実資は、道綱は無学だと言っているのです。実資の怒りは、道綱のみならず、道長にも向かっています。「近臣」(道長)が頻りに国政を執り「母后」(一条天皇の母で、道長の姉・詮子)が朝事を専らにしていると。実資の怒りは、国母(天皇の母)詮子にも向いています。
その上で実資は、権勢家の親族ではない「無縁の身」はどうすれば良いのかと嘆くのでした。実資は道長への不満を日記に書き付けるだけであり、面と向かってはぶつけていません。逆に両者の関係は親密でした。実資は後に大納言に昇進していますが、直接、道長に怒りをぶちまけていたらそのようなことはおそらくなかったでしょう。実資は日記に不満を書いて、溜飲を下げたのでした。
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